海藻コラム1回目は、コンブの出汁は、海の中でも溶け出しているのか?
についてお話したいと思います。
コンブは、その種類を調べただけでも20種類以上あります。
私たちが日々お世話になっているコンブは、北海道原産のものが中心で、マコンブ、ナガコンブ、ホソメコンブ等。学術的な分類で言うと、コンブ目コンブ科に属します。
食卓で目にするコンブの名前は、水揚げされる場所で名前が変わります。
(羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布等)
コンブは出汁をとったり加工して食用として食べたりと皆さんにとっても身近な食材です。おかげさまショップでも「昆布茶」「梅昆布茶」「活真鯛の昆布〆」にコンブをつかっています。スーパーや飲食店でもたくさんの加工品や食品としてあつかわれていますね。
ちなみに、コンブと同じく私たちとなじみの深いワカメも実はコンブの仲間で、コンブ目チガイソ科という種類になります。食卓で見るワカメは、コンブと違い、薄くてペラペラとしていますが、あれはワカメの一部を切り取ったもので、ワカメ全体はコンブのように肉厚でしっかりとしていて大きな姿をしています。
収穫したばかりのワカメ
では、お話を元に戻しましょう。
料理をおいしくするのに欠かせない食材、コンブ。
コンブを使った、出汁はおいしいですね。
コンブの出汁は、水につけることで溶け出しますが、さて、ひとつ不思議に思うことはありませんか?海の中にいるときには、コンブの出汁は海中に溶け出さないのでしょうか?
■今回の海藻コラムを読むと・・・
- お料理に使うとき、コンブに愛情がわく。
- ご家庭の鍋料理の時に、お子さんに役立つ話として聞かせてあげられる。
- お子さんの理科や自由研究の資料になる。
ちょっとした海藻の疑問が解決されるので、お子さんとの知的な話題作りに、そして自由研究の情報として、これからも興味深い情報を発信させていただきます!
それでは、お待たせしました。
■『コンブは海の中で出汁が溶け出しているのか』の答えは!?
ズバリお答えすると、出汁は溶け出していません。
市販されているコンブは、塩水の中でも、水の中でも、煮立ったお湯の中でも、出汁は溶け出します。海の中にいるコンブと市販されているコンブ、出汁が出る、出ないの違いは何かと言うと、コンブが生きているか、死んでいるかの違いです。
生きているコンブからは出汁は溶け出さず、死んだコンブからは出汁が溶け出すというわけです。
違いを分かりやすくするために、死んだコンブと言いましたが、死ぬというとやっぱり聞こえが悪いので、ここからは『加工されたコンブ』で説明を進めますね。
■市販のコンブの加工方法
市販されているコンブの作り方を簡単にご説明すると
- コンブを収穫する
- 収穫した生きたコンブを地面に広げて延ばし、太陽の光と風にあてて長時間乾燥させる。
以上となります。
この簡単な工程で出汁が出るコンブになるんですね。
あまりに簡単なのが意外ですね。
■海藻は乾燥しても水に戻せば生き返るのでは?
ここで、また疑問が浮かびます。
浅瀬で生きている海藻は、潮の満ち引きで、毎日干からびたりしていますが、死ぬことはありません。コンブも同じ海藻ですから、干からびたとしても、水に戻せば生き返ると思いませんか?
実は、浅瀬で生きていている海藻は乾燥にとても強いのですが、コンブのように比較的深いところで生きている海藻というのは、長時間乾燥させられると生きていられないのです。ですから、乾燥したコンブは水に戻しても生き返らず、出汁が出てしまうというわけです。
私がコンブの出汁が海の中でも溶け出しているのかについて書こうと思った背景ですが、実は小学生時代の実家での体験を思い出したからです。私の実家のすぐ近くには海があり、小さな港町になっていました。毎日いろんな魚が水揚げされるのですが、漁師のおじさんに、コンブのような海藻をもらいました。
そこで、見よう見まねで、出汁をとってみようと、鍋に水と謎の海藻を入れ、一日おいてみたのですが、翌日も、その翌日も、水は水のままで、何も出汁の味がしなかったのでした。
そこから調べてみて、生きているコンブからは出汁は溶け出さず、加工されたコンブからは出汁が溶け出すということが分かりました。この出来事がなかったら、疑問にも思わないままでした。
それから、漁師の方でも、干すことでコンブが死ぬと知っている人は少ないそうです。
それだけ、海藻は水に戻せば生き返ると思っている人が多いということですね。
■コンブは加工されたらなぜ出汁が溶け出すようになるのか?
では、最後に、コンブはなぜ、加工されると出汁が溶け出すのでしょうか?
これは、コンブが生きている時には、細胞膜が出汁の流出を防いでくれているからです。
コンブの出汁の成分は、グルタミン酸と言われるアミノ酸の1つで、うまみ成分としても知られています。アミノ酸は、生きていくために必要な成分なのでコンブが生きている間は細胞膜がしっかりと溶け出さないように守っているわけですが、加工されてしまうと、細胞膜の働きも無くなり、アミノ酸(グルタミン酸)が溶け出すという仕組みです。
分かりやすいですね。
■まとめ
海藻コラム1回目は、昆布の出汁は、海の中でも溶け出しているのか?についてお話ししました。普段何気なく料理に利用しているコンブですが、出汁が出るときと出ないときの、ハッキリとした理由を知らないで、当たり前のように使っていたことに驚きました。
同じ海藻でも、海の深さで生きている海藻の性質が違うことも今回少し分かりましたね。
私たちの生活に欠かせない食べ物『海藻』ですが、まだまだ、知っているようで実はよく知らないという疑問、難問がたくさんありますので、今後も海藻の何気ない疑問から大いなる疑問まで、海藻コラムを通して解決していきたいと思います。
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