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COLUMN

海藻コラム

アレルギーは腸内細菌の乱れが原因?

目次

アレルギーと腸内フローラの乱れ

1998年、大変興味深いイギリスでの疫学調査の結果が報告されています。FarooqiとHopkinは、乳幼児期における抗生物質の使用が喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーおよび花粉症などのアレルギー疾患の増加の要因の一つで、これは、抗生物質の使用により腸内フローラが乱れるために引き起こされることを報告しています。このことは、人類が長い期間にわたり腸内細菌と共存してきた歴史を、「世紀の大発見」とも言われる抗生物質の乱用によって腸内フローラを乱してしまったことが、皮肉にも、近年のアレルギー性疾患の世界的な増加を招いてしまっています。

卵アレルギーが、腸内フローラの乱れに関係していることを、関西医科大学の研究チームが突き止めました。腸内環境を改善することで、食物アレルギーの予防や治療につながる可能性があります。ちなみに、「平成30年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」によると、食物が原因で引き起こされるアレルギーのうち卵の割合が最も多く、全体の約35%を占めています。

 

3歳までに決まる腸内フローラの基礎

アレルギーは過剰な免疫が引き金となるため、研究チームは、体の免疫細胞の7割が集まる腸に注目。免疫細胞と作用し合う腸内細菌を調べた。腸内細菌は腸の粘膜にびっしりと張り付いています。食生活などにも影響しますが、おおよそ3歳までにはその人の腸内フローラの基礎が決まるとされています。

 

アレルギーを引き起こす菌の存在

研究チームは、1~8歳の子どもを対象に、卵アレルギーのある子と、アレルギーのない子(健常児)の便を遺伝子解析し、腸内細菌叢の状態を比較しました。その結果、卵アレルギーのある子どもは、腸内に存在する細菌の分布が健常児とは異なっていました。さらに、腸内で「酪酸」という物質を作り出す「酪酸産生菌」の割合が、健常児の3分の1ほどであることがわかりました。酪酸は、過剰な免疫を抑える役割を持つ「制御性T細胞(Tレグ)」を増やすことがわかっている。酪酸産生菌が少ないと、作られるTレグも少なくなる。アレルギーのある子どもを調べると、血液中のTレグの割合が、健常児より低い傾向にありました。

 

まとめ

以上のことから、腸内の酪酸産生菌や酪酸を増やすことが、食物アレルギーの治療につながる可能性があります。酪酸産生菌のエサになる水溶性食物繊維を多く含む「海藻」を食べることが、今後益々重要になってくるかもしれません。

〈参考文献〉

・FrooqiIS,HopkinJM:Earlychildfoodinfectionandatopic disorder.Thorax53:927-932(1998)

・朝日新聞(夕刊)2021年(令和3年)4月28日(水)