幸せホルモンと腸内細菌
人が幸せな気持ちや心の落ち着きを感じている時、脳内では様々なホルモンが分泌されています。その代表的なものが、幸せホルモンと呼ばれている「セロトニン」や「ドーパミン」です。これらのホルモンは嬉しい時、楽しい時に分泌され、やる気を高めたり、心の平穏を助けたりしする働きをすることが良く知られています。なかでも、セロトニンは、不足するとうつ病を発症すると言われており、ストレス社会に生きる私たちにとっては、非常に重要なホルモンです。免疫細胞の7割は腸に存在しており、腸内環境が免疫と大きく関わっていることをお話してきましたが、実は、心のケアも、腸内環境が大きく関わっているのです。
幸せホルモン「セロトニン」
最新の研究では、精神を安定させる神経伝達ホルモンである「セロトニン」の90%は、脳ではなく腸でつくられていることが明らかとなりました。セロトニンは、腸内でトリプトファンというアミノ酸から合成されるのですが、この合成は、腸内の善玉菌が担っています。さらに、セロトニンは睡眠ホルモンである「メラトニン」とも深く関係しており、セロトニンの量が減少するとメラトニンが生成されなくなるので、睡眠の質が低下します。また、「やる気」にスイッチを入れるドーパミンの素となるビタミンを産み出すのも、腸内の善玉菌。腸内環境が乱れ悪玉菌優勢の状態になると、「やる気が起きない」「だるい」などの症状に代表される、軽度のうつ病に陥りやすいと言われています。
腸内環境を整えるには
腸内環境を左右するのは、100兆個ともいわれている腸内細菌たちです。生きた乳酸菌や海藻などに含まれる水溶性食物繊維は、善玉菌優位な腸内環境にしてくれるので、積極的に摂りたい成分です。なかでも水溶性食物繊維の摂取は非常に重要で、小林メディカルクリニック東京と順天堂大学との共同研究において、水溶性食物繊維(こんにゃく由来のグルコマンナン)の摂取により、メンタル的ストレス症状が緩和できる可能性が報告されています。
まとめ
幸せホルモンが棲みやすいきれいな腸を維持するためにも、毎日きのこや野菜、海藻など食物繊維の多い食材を日ごろから積極的に取り入れてください。
〈参考文献〉
・星子尚美「腸のことだけ考える」(ワニブック)
・小林暁子「今日からはじめる健美腸ルール」(講談社)
・江田証「新しい腸の教科書」(池田書店)