免疫機能と腸内細菌
病気への抵抗力や免疫機能に関わることが明らかとなってきた腸内細菌。ヒトの腸内には、数百種類、数百兆個、総重量にして約2㎏にも及ぶ多種多様な細菌が生息していますが、その中でも特に、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が、私たちの免疫機能に好影響を及ぼす可能性のあることが報告されています。免疫機能は加齢と共に低下することから、感染症対策の観点からも、高齢者では特に、『免疫機能の維持』が重要な課題です。
名古屋市立大学大学院の研究結果
名古屋市立大学大学院の赤津裕康教授らの研究によると、胃から直接栄養を摂っている高齢の入院患者45人をを対象に、ビフィズス菌の効果を検証。ビフィズス菌を摂るグループとビフィズス菌を摂らないグループとに分け、12週間摂取させ、ナチュラル・キラー(NK)細胞の活性化とインフルエンザワクチン接種後の抗体価を指標に、免疫力を評価しました。
試験の結果、ビフィズス菌を摂っていないグループでは、NK細胞の活性化が低下していたが、ビフィズス菌を摂ったグループでは活性が維持されていました(図1)。また、ビフィズス菌を摂ったグループでは、インフルエンザワクチンに対する抗体価が多くの人で上昇していました。
理研ビタミン研究グループの研究結果
同様の研究は、メカブフコイダンでも行われています。2013年、武庫川女子大学の家森幸男教授らと理研ビタミンの研究グループは、特別養護老人ホームに入所している67歳から102歳の男女70名を2つのグループに分け、1つのグループにだけ300㎎のメカブフコイダン(三陸宮城県産めかぶ2カップに相当)を毎昼食時に摂ってもらいました。
1か月後、インフルエンザ3種混合ワクチン(H1N1:新型A型、H3N2:香港A型、B型)を接種し、その1か月後に各種インフルエンザワクチンに対する抗体量を測定した結果、メカブフコイダンを食べたグループは全てのウイルス株に対して、抗体量が増加しました。さらに、メカブフコイダンを食べたグループでは、免疫担当細胞のNK細胞の働きも高まっていました。
まとめ
免疫機能の低下を防ぐためには、日常の食事の中で『腸内細菌を元気にする』食事を、意識して摂ることが重要。すなわち、ヨーグルトや納豆、漬物、味噌などの発酵食品(プロバイオティクス)や、水溶性食物繊維を多く含む海藻、豆類、穀類など(プレバイオティクス)を積極的に摂ることです。さらには、プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に摂ると相乗効果が得られます(シンバイオティクス)。 自分自身のために食事をするという意識の他に、腸内細菌にもエサ(栄養)を与えるつもりで食事を選ぶことが大切です。<参考文献>・朝日新聞(2021年3月27日号) ・H.Negishiら、JNutr、143、1794-8(2013)